普段仲良くさせていただいていた4人さんが主催と聞いて、参加させていただいちゃいました。
公開期間は2003年8月25日〜同年10月31日。
公開期間はすでに終了、跡地は扉だけが残っておりますので、参加作品はこちらに展示させていただきました。
私のほかにもたくさんの方が参加なさってらっしゃいまして、みなさんそれぞれの世界のジョーくん&フランちゃんを見ることができてとっても眼福でございました〜♪





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主催:飛鳥大希さん 運営協力:本村ゆうさん・スキピオ(現・剣持葵)さん・はるはるさん

ゴカイ

このページの壁紙はnoionさん、からお借りしています


「ジョーッッ!!!」


フランソワーズが、さっきから何度もジョーを呼んでいるのに、ジョーはなぜか気がつかない。
久しぶりに休日が一緒の日に取れたからと、デートにでかけて来たというのに・・・。
ならば、と、そう、耳元で大声で叫んでみた、通信機のボリュームもついでに最大に上げて・・・。
「わ☆、何するんだよ、フラン・・・。」

まだ、耳がジンジンする・・・とジョーはブツブツ文句を垂れる。
そりゃそうだろう。フランソワーズほどではないにしても、ジョーだってある程度聴覚を強化されているのだ。それなのに、耳元で大声で、おまけに脳波通信機でも最大のボリュームで叫ばれてしまったのだ。いくらなんでも、たまったもんじゃない。

ボクの耳を壊すつもりなの?と言おうとしたのだが、フランソワーズのタダならぬ気配を察知して、ジョーは思い留まった。

「やっとお気づきになったようね?」
コトバは優しいが、口許は引きつっており、更に額の辺りには怒りマークが5,6個ついていそうな、モノスゴイ形相に、さしものジョーも身の危険を感じざるをえない。

「・・・・・」
あまりのコトに、返す言葉もないジョー。


「私があなたを何回呼んだか、おわかり?」
「さ・・・3回かな・・・?」
コレくらいの質問な勘ででも答えられるかな?と弱々しく答える。
だが、結果は
「ブーーッ!5回よ。」
「ご・・5回?・・・(しまった!)」
火に油を注いでしまったかと、ジョーは焦りまくる。

「どうして?」
「へ???」
突然、瞳に涙を浮かべて訴えられて、ジョーはドギマギしてしまった・・・。

「どうしてそうなの?私が隣にいるっていうのに、他のオンナの人に見惚れてるなんて・・・。」
「誤解だよ、フラン。」
「ゴカイは、さっき私があなたを呼んだ回数よ。」
「そうじゃなくって・・・」
「そうよね、あなた、ああいうヒトが好みだったものね。
黒目がちの大きな瞳をした、グラマーな女性(ひと)。」
「だから、誤解だよ!!」
「知らないわよ!私、帰る!!!」

走り去ったフランソワーズを、ジョーは追いかけようとした。
普通なら、そんなことなど、容易い事なのだが、運悪く、すぐ傍にあったバス停に停まったバスから降りてきた人の流れに邪魔をされて、フランソワーズの姿を見失ってしまった。

(フラン!どこにいるの?)
普段の生活では、能力(ちから)は極力使わないようにしているのだが、さすがに大声で彼女を呼ぶのは憚られるので、脳波通信機を使って呼びかけた。
だが、今喧嘩したばかりのフランソワーズが応えるわけもなく、ジョーは仕方なくフランソワーズが走り去った方向に取り敢えず歩き出す。

しばらく歩いていくと、フランソワーズの姿が見えた。
「フラン・・・」
走り出そうとした次の瞬間、フランソワーズが誰かと一緒にいるのが見えて、様子を見守ることにした。

「ねぇ、ちょっとだけ、いいじゃないですか。
さっきから、連れがいるって言ってるけど、ちっともソイツ来ないじゃない。
本当は、そんなヤツいないんじゃない?
もし、いるんだとしても、アナタみたいなステキなヒトを放っておくなんて、ユルセナイなぁ。
いや、許すべきじゃないよ。
そんなヤツ放っておいてさ、ボクとイイトコへ行きましょうよ!」
ちょっと見は、結構ハンサムなこの男は、どうやら、フランソワーズをナンパしようとしているらしい。
上手いこと言いくるめて、フランソワーズをどこかに連れこもうという魂胆が見え見えだった。

一方、フランソワーズは、そんな男の魂胆に気づいていてはいたものの、どうしようかと、考えあぐねているようだった。
こんなヤサ男、投げ飛ばすくらいは簡単なのだが、衆人監視の中、そんなコトをやらかすわけにもいかないし、かと言って、、自分を追ってすぐ後ろに来ているであろうジョーに助けを求めるのも、ナンだかシャクに障る・・・と言ったところだろうか・・・。

そうこうしているうちに、件のヤサ男がフランソワーズの手首を掴み、強引に迫り出したので、ジョーは意を決して二人の方に歩み寄った。

「フラン、行くよ。」
ジョーはわざと二人の間に割って入り、しかも、敢えて男を無視した態度を取った。
「な・・・なんだよ、お前・・・。」
口だけは勇ましく、ジョーに食って掛かったヤサ男だったが、ジョーにキッと睨みつけられて、ソソクサと退散した。
「なんだ、彼氏、いるんじゃん・・・。思わせぶりな態度しやがって!」
と、自分が勝手に都合の良いように思いこんだのを、棚に上げるような捨て台詞を残す事を忘れずに・・・。

お前(あんた)が、勝手に思い込んだだけだろ(だけでしょ)!
二人は同時に、心の中で毒づいた・・・。

そして、男の姿が見えなくなると、ジョーはフランソワーズの手首を掴み、ものすごい速度で男とは反対の方向へ歩き出した(もちろん、加速装置は使わずに)。

「ねぇ、ジョー、痛いから、離して。」
フランソワーズの言葉も無視して歩き続け、賑やかな大通りを抜け、閑静な住宅地にある、小さな児童公園にやってきた。

辺りはもう、暗くなっており、この公園にも子供はおろか、人っ子一人いない。

「離してよ!」
フランソワーズは、やや乱暴にジョーの手を振り払った。
「もうっっ、ジョーったら、痛いじゃない!」
「ごめん・・・。」
手首を痛そうに擦りながら文句を言うフランソワーズが、なんだか可愛いと思えてしまったジョーは、苦笑しながらもそう謝った。

奇妙な沈黙が流れた後、ジョーは徐に言った。
「フラン、ボクの話も聞いてよ。」

「確かに、さっきキミが怒り出した直前、ボクはキミが呼んでいるのがわからなかった。
5回も呼んだのに返事しなかったら、そりゃ、怒るのも無理はないと思うよ。
だから、怒鳴るのと同時に通信機を使ったのも、まぁ、仕方がないと思う。
ボリュームを最大にする事はないんじゃないかって思うけどさ・・・。」

「だけど、ボクは、決して他の女の人に見惚れていたわけじゃない。
それは、神様に誓ってもイイ。」

「じゃ、なんで、返事してくれなかったの?」

「それは・・・その・・・/////」

「なんで?」

もっともなフランソワーズの問いに、どうしても答えられないジョーは、フランソワーズの手を取ると、走り出した(もちろん、今度も加速装置は使ってない)。

とある店の前に来てジョーは立ち止まった。
「これを見て・・・。」
「・・・これ・・・。」
「ボクはあの時、これに見惚れていたんだ。いや、正確に言うと、これを着たキミの姿を想像して見惚れてたんだ。」

ここは、さっき、フランソワーズが怒り出した時にいた場所。そしてバレエ用品の店の前。その店のショーウィンドウには、バレエの舞台衣装が飾られていた。
メインに飾られていたのは、「眠れる森の美女」のオーロラ姫の衣装・・・。

「コレを着て踊るキミの姿を想像してたら、止まらなくなっちゃって・・・///」

「ジョー/////」

11月に行われる公演では、フランソワーズはオーロラ姫を踊る事になっており、ジョーは初日と最終日の両方を観に行くことになっていた。
オーロラ姫は、フランソワーズが以前から踊りたがっていた役であることも、もちろんジョーは知っている。

「ジョー・・・?」
「なんだい?」
「ごめんなさい!変なヤキモチやいちゃって・・・。それから、さっき、助けてくれてありがとう。」
「別に、・・・いいよ、もう・・・」
(誤解が解けさえすればもう、そんなことどうだって・・・)

「あの・・・それとね、・・・」
まだ言いたいことがありそうなフランソワーズの様子に、ジョーは怪訝な顔をする。
「何?」
「もうひとつ、謝っておかなくちゃならないコトがあるの・・・。」
「え???まだ、何か・・・」
「ゴカイじゃないの・・・。」
「へ???」

フランソワーズは、甘えるような上目遣いをして、ジョーを見ながら言った。
「5回じゃないの、私が呼んだのは3回なの!」
「え゛・・・・」
あまりの展開に、ジョーは呆然とする・・・。
「だって、あなた、あんまり見惚れてるんだもの、それっくらいサバよんだってわかりゃしないと思ったのよ。」
「ひどいよ、フランソワァズゥ・・・。」
「だから、ごめんなさいっっ!!」

フランソワーズがあんまり、申し訳なさそうに謝るので、悪い気はしないジョー。
「もういいよ。それに、ボク、もう気にしてないし・・・。」
そう言って、あっさりと許してしまうのだった。

「それよりもさ、まだ時間があるから、ドコかに行こうよ・・・。」
二人は、何事もなかったように、また、並んで歩き始めた。