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《解決・そして・・・》

マンションを出ると、ギルモア達が待ち構えていた。
無事に事を済ませて出て来た3人の姿を見て一様に皆ホッとした表情をした。
もっとも、いつも一言多いジェットは、「誘拐されている最中に、犯人をアゴでコキ使った女」などと言って、脇腹にフランソワーズの肘鉄砲をくらい、足をジョーに踏まれて悲鳴を上げたりもしたが・・・。それはそれで、ジェット流の「お帰り」なのだと言うことは誰もが知っていることなので、そんな騒ぎも一笑に付された。

研究所に戻り、4日ぶりにみんなで夕食を取った後、自室に戻ったフランソワーズはジョーにずっと疑問に思っていた事を切り出した。
「ねぇ、ジョー。あなたは、あの時、『岩田のマンションに来るのが2日ほど遅くなってしまった』って、言ってたわよね。それって、岩田の脅迫状が事務所に届く前から、事件の事を知っていたって言うことなの?」
「ああ、そうだよ。」
「ジェットやアルベルト達から連絡があったの?」
「いや・・・彼らは、関係ないよ。」

実は、ボク、出発した日の夜に研究所に電話したんだ。そうしたら、誰も出ない。変だなって思って張々湖飯店のほうにも電話を入れたんだけど、こっちも誰も出ない。嫌な予感がして、チーフに無理を言って、翌朝、研究所に戻ってきたんだ。研究所には誰もいなくて、オカシイなと思っていたら、イワンからテレパシーで連絡があって今度の事を知ったんだ。

本当はすぐにでも助け出しに行きたかったんだけど、イワンから、キミがボクに気を使ってアルベルト達に口止めしたり、なるべく事を荒立てない様にしてくれている事を聞いて、考えが変わったんだ。
キミの気持ちを無にしないようにするには、どうしたらいいか・・・、それを考えてね。

「岩田の事を調べて、その後病院を訪ね歩いて・・・。
結構手間取ってしまってね、それで、2日もかかっちゃったんだ。ごめん、遅くなってしまって・・・。」

「そんな事・・・。
あ、でもジョー、なんで出発した日の夜になんか電話してきたの?いつもはそんなコトしないのに・・・。」

「あ・・・うん、忘れ物・・・しちゃったんだ。」
「なにを忘れたの?」
「うん、/////キミに勝利のおまじないしてもらうのを忘れちゃったんだ・・・」
「え゛・・・ジョーの、ば・・・か・・・///」
「でも、もう、いいんだ。決めたから。」
「ナニを決めたの?」
「それは・・・・・・」

こうして恋人達の夜は更けていく・・・。階下で行われている、どんちゃん騒ぎ(別名・事件解決祝い)とは無関係に・・・である。


翌日、ジョーはフランソワーズを伴い、遠征先に戻って行った。全てを明らかにすることは出来ないが、彼女とのコトだけは公にして、今回のような事件に巻き込まれないようにする為に・・・。

メンバー全員が予想した通り、このことは大々的に取り上げられ、二人の写真が数多くの週刊誌やスポーツ雑誌などに掲載された
お祭り騒ぎのダイスキな張大人とグレート、ジェットの3人は、手分けしてそれらの雑誌を買い漁り、研究所のリビングに広げ、アルベルトの失笑を買った。もっとも、そのアルベルトも、実は、一番写りのいい写真をポートレートにでも加工して、二人にプレゼントしようと目論んでいたりしたのだったが・・・。



更に数週間後・・・。

岩田の娘、美加は、あの時にジョーが紹介した大学病院に転院していた。
事件当時、一時的にではあるが、かなり重症に陥っていた美加の容態も、この病院での治療が効を奏して、快方に向かっていた。
おそらく、ジョーが以前入院していた病院の検査結果なども送っていたのだろう、不必要な検査などをされることもなく、有能かつ温かみのあるスタッフに囲まれ、快適(?)な入院生活を送っていた。そして、このまま行けば、あと1,2ヶ月後には退院できるところまでこぎつけていた。

岩田はアレ以来、裏の汚い仕事は辞め、表の、本来の雑誌記者としての仕事に没頭していた。
仕事を終えると、真っ先に病院の美加の許を訪れるという毎日だ。
妻の死後、心が荒み始めてからはなかった、平穏な日々を送っていた。

ゴローは、岩田の勤務する出版社にアルバイトとしてではあるが採用され、毎日を忙しく過ごしていた。
時々、あの事件の事や、教会にいた頃のことを思い出してはいたが、ある日、思いがけない手紙を受け取った。


ゴローへ
先日は、思いがけないところで再会できて、本当は懐かしくって仕方なかった。「元気だったか」って、声をかけたかったんだけど、君がいろいろと気を使っていてくれていたことを知っていたので、出来なかった。
あの時、君が僕について知っていることを、岩田に一言も知らせずにいてくれたことは、感謝している。一部始終は、全部フランソワーズから聞いたよ。本当にありがとう。

君とはもう一度会って、ゆっくりと話をしたいと思っている。だけど、あの時岩田に言ったように、僕と関わりあうと、特に僕の過去を知っているとなると、とんでもないことに巻き込まれてしまう危険があるんだ。だから、君と会うことは二度とないと思う。岩田にもそう伝えてくれ。君に会えて、本当に嬉しかったよ。
                                           島村 ジョー



さらに・・・♪

優勝カップを手に凱旋帰国したジョーを、待っていたものは、仲間達の笑顔だけではなかった。
大勢の週刊誌や、雑誌の記者達、そして・・・。



「おい・・・なんとかしてくれ。」
帰国して10日後。呼び出されて事務所に行ったジョーは、いきなりチーフに泣きつかれた。
レースで劇的な優勝をし、さらに、フランソワーズとの交際宣言までやってのけたジョーに対する取材攻勢はかなりなもので、チーフは本来の自分の仕事が出来ないアリサマだった。

オマケに、どうしたわけか、二人の結婚は秒読み段階という噂まで飛んでいて、結婚式場やドレスの業者などからは、「挙式の際には是非ウチで・・・」とパンフレットが山の様に届けられたし、旅行会社からは、「ハネムーン用に」と資料がこれまた山の様に届いていた。

ジョーは帰国後しばらくの間、雲隠れを決めこんでいたので、そんなことになっているとは全く知らなかったのだが・・・。

(イワン〜〜〜!!なんとかならない?)
思わずジョーは、脳波通信でイワンに助けを求めたが、
(僕眠イカラ・・・オヤスミ・・・)
イワンからの返事はコレだけだった・・・。

これくらい、自分でなんとかしろ・・・ってことか・・・。
ジョーはひとりごちた・・・。








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< あ・と・が・き >

2003年4月にお受けしました、本村ゆうさんのキリリクです。

キリリクの内容は
『レーサーのジョーくんとバレリーナのフランちゃんが、普通にデートしていたら、週刊誌とかで騒がれても不思議はないんじゃないかなぁ。ジョーがそういう事に対して、ちゃんと対応して、カッコイイところを見せて欲しい。』
というものでした。

で、初めて事件ガラミのものに挑戦してみました。大筋はかなり早い時期に出来あがっていましたが、細かいところで,矛盾点が出て来たりして、仕上段階でかなり難航しました。
珍しく、頭を使いました・・・(笑)。




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                                      2003/11/08