1月も半ばになると、ジョーは毎年憂鬱な気分になる。
ちょっと前、12月の半ばあたりにもにも憂鬱になったばっかりだというのに、だ。
理由は簡単。
彼がこの世の中で一番愛してやまない恋人であるフランソワーズの誕生日が近いからだ。
子供の頃からプレゼントなどという習慣から縁遠い生活をしてきたせいで、たとえ愛しいフランソワーズへのプレゼントでも、コレと決めるのは困難を極めるのだった。いや、フランソワーズに贈るものだからこそ難しいのかもしれないのだが。
不謹慎な言い方を承知で喩えれば、フランソワーズに贈るプレゼントを難なく決めるということよりも、BGの1個師団をたった一人で壊滅状態にする方が、ジョーにとっては遥かに容易いことだったりする。
思い余ってフランソワーズ本人に「誕生日のプレゼントは何がいい?」と何度か聞いてみたが、「ジョー選んでくれたもののならば、何でも嬉しいにきまってるじゃないの。」とか「クリスマスにステキなプレゼントをもらったばっかりなのに・・・」とか「ジョーと一緒にいられるだけで幸せなんですもの。これ以上のものなんて望まないわ」等と言われてみごとに玉砕してしまった。
ならば・・・と、仲間に相談してみた事もあったが、ロクな回答思うような回答を得られず、コレも撃沈。(以上の詳細は「めりー苦りすます!」参照・笑)
今日はフランソワーズは朝からバレエ講師のバイトに出かけているので・・・と、ジョーはおおっぴらにリビングで一人思案に暮れていた。
「女の子のものを選ぶなんて、ボクには土台無理なハナシなんだよな。かと言って、みんながフランソワーズにプレゼントをあげるっていうのにボクだけ何もあげないなんて、そんなこと悔しいし・・・。あ゛〜〜〜どうすればいいんだよ〜。」などとブツクサ言っていると、いきなり
「いよっっ」
と声がしていきなり思いっきり背中を叩かれた。
振り向いてみるとジェットがニっと笑ってピースサインをしている。
「あ、ジェット。いつ帰ってきたんだい?」
「さっきだよ。気がつかなかったのか?」
「うん・・・」
「そんなことじゃ、戦士失格だな・・・」
と言おうと思ったが、今のジョーにそれを言うのはなんだか酷なような気がしてぐっと飲み込んだ。
その代わりに・・・
「何、不景気な顔をしてるんだよ。色男が台無しだぜ。」
と、自分の疑問をジョーにぶつけてみた。
まぁ、おそらくヤツが悩んでいるのはコレだろう・・・と大方の察しはついていたのであるが・・・。
一瞬、この難局を乗り切るためのアドバイスを彼から引き出そうと思ったジョーだが、過去の度重なる失敗を思い出し(この件に関しても「めりー苦りすます!」参照・笑)寸でのところで思いとどまった。
ジョーが答えないのでジェットは自分から話をそっちに向けてみた。
「フランソワーズへのバースデープレゼントが決まらないんだろ?」
ぎくっとしたジョーを見て、「ビンゴ!図星だぜ。」とほくそ笑みながら
「アドバイス、欲しいんだろ???他ならぬお前たちの為だ。とびっきりのプランを教えてやるぜ〜〜〜。」
とジョーを後ろから羽交い絞めにしてニタつくジェットだったりする。
しかし、ジョーとしても以前の苦い思いを繰り返したくないので、必死に両耳を押さえ、そしてしがみつくジェットを振り払おうとする。
「キミの優しい気持ちには感謝するけど、でも、キミのアドバイスに乗っかってうまく行った試しはないんだから、そっとしておいてよ。」
と叫ぶようにして、自室への避難を試みるが・・・。
敵も、もとい、ジェットだって一級戦士の端くれ。
そう簡単に振り払われることもなく、しっかとジョーにしがみつく。
そして、ジョーの首筋にふ・・・と息を吹きかけジョーが反射的に耳を押さえた手を放した瞬間に「○×※↑」となにやら耳打ちし「ジョー、女を落とすテクニック、しかと伝授したぜ!」と笑いながら自室に戻っていくのだった。
台風のようなジェットが去った今、リビングにただひとり残されたジョーは・・・
「ボクは何も聞いてない。何も聞いてない。ジェットが言ったとんでもないことなんて、何も聞いてない・・・。」
と、まるで呪文のように繰り返していた。
確かに、ジェットの囁いた作戦も相手によっては功を奏するかもしれない。が、問題はフランソワーズが果たしてそれを喜ぶか・・・。
ジョーにはなんとなくわかるような気がした。
やっぱり、自分で考えるしかないか・・・。
ジョーの悩みのループは振り出しに戻る。
しかも、ジェットの伝授した「テクニック」とやらがジョーの脳裏にちらりちらりと見え隠れしていて、考えがまとまらなくなった分だけ、余計に結論を出すのが困難になったような気がする。
「ちくしょう!」
万が一の場合、自分だけプレゼントを贈れない理由をジェットのせいにするのはなんだか卑怯者のすることのような気がして、「それだけはしたくない。絶対にするもんか!」と、必死にジョーは考えを巡らせるのだった・・・。
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2009/01/24