kiss
ママンがサンタにkissをした?!

このページの壁紙はFioreさんからお借りしています


「どーしても、だめ?」
「ええ、どうしてもだめよ。早くおやすみなさい。」
こういう時、ママンはとっても毅然としている。
今夜は絶対に起きていようと思ったんだけど、ママンは首を縦には振ってくれない。

「あのね、私、どうしても起きていなくっちゃならないのよ。」
こうなったら、私のお得意の瞳ウルウル攻撃で、ママンを陥落させる作戦よ。
「お願いよ、ママン。今夜だけでいいから起きていさせて。」

「じゃ、どうして起きていなくっちゃならないの?」
「あのね・・・。ごにょごにょ・・・・」
私はママンに耳打ちした。
だって、ターゲットがどこで聞いているかわからないじゃない?何せ彼は神出鬼没。夜中にそ〜っと家の中に入ってきて、寝ている子の枕元にプレゼントを置いて、またそ〜っと出ていっちゃうんですもん。だれも彼の正体を知らないのに、皆が彼のことを知っている。そう、その「彼」って、もちろん、サンタクロースよ。

「え〜〜〜?」
ママンが目を丸くした。そんなに驚くコトじゃないじゃない!
私はサンタさんに会いたいだけなのに。
「でもね、サンタさんは起きている子供のところには絶対に現れないのよ。ぐっすりと眠っている良い子のところにだけやって来るのよ。」

「私は、サンタさんに会ってプレゼントのお礼が言いたいだけなの。それからね、どうして、私の欲しい物がわかるのか、聞いてみたいだけなのに・・・。」
「うふふ・・・。大丈夫。あなたの気持ちはサンタさんはよくわかっているわよ。」
「どうして?」
「それは・・・それはね、サンタさんはいつもあなたのことを見ているからよ。」
「え?どこから、私を見ているの?」
「さぁ、どこからかしらね。でも、あなたのことを見ているのは確かよ。じゃなきゃ、どうして、いつもあなたの欲しい物がわかるのかしら?」
「・・・・・・・・・・・」
「さぁ、わかったら、早く寝ましょうね・・・」

ママンは私をベッドに入れるとおやすみのほっぺにキスをして、部屋を出て行った。

ママンはそう言うけど、私は絶対にサンタさんに会いたいの。会って直接お礼を言うんだもん。
絶対に・・・。絶対・・・・に・・・・。
ぜった・・・い・・・・・・・・・・・・に・・・・・・。





顔に光が当たった気がした。
あ・・・私ったら寝ちゃったんだ・・・。
なんだか人の気配がする。もしかして、サンタさん?
薄目を開けて誰なのか確認しようとしたけど、ドアの外は明るすぎて見えない。

「ほらね、寝ちゃってるわよ。」
ママンの声だ。小さい方の影は、ママンなのね。
「ホントだ。・・・・・だね。でもちょっと・・・かな・・・」
ママンとは違う低い声がそう言った。
この声・・・。聞き覚えがあるような・・・でも違う声のような・・・。

大きな影・・・あ、赤い服を着ているようね。
光に目が慣れてきて段々見えるようになってきた。
赤い服に、白いお髭。・・・サンタ・・・さん???
でも、背中から光が当たっていて、そのせいで、お顔がよく見えない・・・。

お髭があるせいか、サンタさんのお声がよく聞き取れないわ。
なんて言っているんだろう?
「せっかく・・・・してきたのに・・・・だなぁ〜・・・」

「うふふ・・・仕方ないわよ。まだ小さいんですもの。」
「ところで、ねぇ、フラン。」
え?
「やっと・・・・・・・・来た、ボクに・・・・はないの?」
「もう・・・・。・・・・のバカ」

え???
サンタさんが、ママンの腰に手を回して抱き寄せている???
ママンとサンタさんのお顔が段々に近づいて・・・

「ママン!!」
「「え???」」

「ママン、だめよ。」
「え?どうしたの?そんな泣きそうな顔をして・・・。」

ママンはいつもと同じ優しい笑顔で私に聞いた。
でもでも、私はイヤなの。ママンがパパ以外の男の人と・・・なんて・・・。たとえ、サンタさんでも・・・。
私は、泣きながら二人の間に割り込んで、サンタさんを部屋の外へと追いやろうとした。

「あっちへ行って!キライ!!ダイキライ!!」
「おいおい・・・。」
サンタさんは困ったように言うと、私を抱き上げた。そして、赤いお帽子を取って、白いお髭を取った・・・。

「え???」
「ひどいな・・・。」
え?サンタさんって・・・・???
そう。サンタさんがお帽子もお髭も取ったら・・・。

「ひどいな・・・。ボクのこと忘れちゃった???」
茶色のお目々が困ったように私を見つめている。そう、このお目々・・・。私、覚えてるわ。
「パパ!!」
私、びっくりしたのと、嬉しかったのとで、思わずパパに抱きついちゃった。

「うふふ。パパね、あなたに会いたくって、二日も早くお仕事を終わらせて帰って来ちゃったのよ。」
「そうだったの・・・。」
「でね、あなたに喜んでもらおうと思って事務所で借りたサンタさんの洋服を着て来ちゃったんですって・・・。」
「でも、却って泣かれちゃうんだもんなぁ〜。」

「だって、パパだって思わなかったんだもん。」
「そうよねぇ〜。ジョーったら、3ヶ月も遠征に行ったまんまで、1回も帰ってこなかったんだもん。忘れられちゃったって、文句言えないわよね〜。」
「ひっどいなぁ〜。
ボクだって帰ってきたかったんだよ。でも、マシンのトラブルが続いちゃったりして帰ってこられなくなっちゃったんだよ。仕方ないだろ?」
パパは、ちょっと唇を尖らせて、不満そうな顔をする。でも、半分は笑っているみたいだけどね。

「じゃ、仕方がないから、許してあげますか!」
「あげますか!」
いたずらっぽく笑うママンに、私も賛成!!

「さぁて、お姫様。よい子はもう、お休みの時間だよ。」
「え〜〜?せっかく、パパが帰ってきたのに?」
「それに、この子ったら、サンタさんに会いたいんですって。」
ママンが私の代わりに言ってくれた。

「え?どうして、サンタさんに会いたいの?」
パパが目を丸くした。
「あのね、サンタさんにお礼が言いたいの。毎年プレゼントをありがとうってね。
それから、どうして私の欲しい物がわかるのか、聞いてみたいの。」
「え゛・・・・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・」
パパが困ったような顔をする。
「それは・・・、うん、そうだ。サンタさんはきっと君のことをいつも見ているんだよ。」
「やっぱり?ママンにもそう言われたの。」
「そうだよ。だから、早く寝ないと、『ああ、この子は悪い子だな。』って、サンタさんは帰ってしまうから・・・。だから、早く寝ようね。」

「うん、わかったわ。」
サンタさんにお礼を言えないのは残念だけど、プレゼントをもらえないのはちょっと寂しいから・・・。

「じゃ、お休み。サンタさんには、パパからお礼を言っておくからね。」
「うん。おやすみなさい。パパ、ママン。」
「「おやすみなさい。」」

パパとママンが私のほっぺにお休みのキスをしてドアを閉めると、部屋の中はまた真っ暗になった。
パパがああ言ってくれたけど、でも私はやっぱり、自分でお礼を言いたいわ。
だから、・・・・・・がんばらなくっちゃ。・・・・・・がん・・ばって・・・・・起き・・・ていなく・・・・・・・・・・・・・・っちゃ・・・。




!!!!
目を覚ましたら、周りはもう明るかった。

枕元をさぐると、何か手に当たった。
たぐりよせてみると、赤い包装紙に金色のリボンがついたプレゼントが置かれていた。
ってことは・・・。

とりあえず私は、プレゼントの箱を持って階下のリビングへと行った。
「あら、おはよう。今朝は早いのね。」
「おはよう。お目ざめの気分はいかがかな?」
「うん・・・」
あんまり良くない・・・。だって・・・。
「あら?プレゼントをもらったにしては、ご機嫌が良くないのね。」
「あの・・・ね。一番欲しい物じゃなかったの。」

「「え゛・・・」」
(そ・・・そんなはずは・・・。私しっかりリサーチしたはずだし・・・)
(ボクだって、あれが一番欲しいって、何度も聞いたよ。)
密かに脳波通信で会話する夫婦・・・。
(↑3行は著者注・・・ってことで・・・(^^ゞ)

ママンやパパを悲しませないような言い方って・・・
「あの・・・ね・・・。
サンタさんに、『おにいちゃんかおねえちゃんが欲しいの』って、伝わらなかったの。」
「「・・・・・・・・」」

しばらく二人ともびっくりしていたみたいだったけど、やがてママンが私に聞いた。
「あのね、欲しい物いつ、変わったの?あなた、確かぬいぐるみが欲しいって言っていたわよね。」
「うん。おとといまでは、ぬいぐるみだったの。でも・・・。」
「「でも?」」

「おととい、お友達のお家に遊びに行ったら素敵なお兄ちゃんとお姉ちゃんがいてね・・・。それで、私もお兄ちゃんとお姉ちゃんが欲しいなって思ったの。でも、いっぺんに両方欲しいって言ったら、欲張りかな?って思ったから、どっちか一人でもいいやって・・・。」
「「・・・・・・・・・・・」」
え?なんで、二人とも何も言ってくれないの???
やっぱり、あきれちゃったのかしら?







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<おまけ>


「ど・・・どうする?フラン・・・」
「弟か妹っていうのならともかく、おにいさんかおねえさんが欲しいなんて・・・ねぇ・・・ジョー・・・」
「え゛・・・・フラン/////それって・・・さ」





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                                         2004/12/24