ジョーくんのナヤミゴト

このページの壁紙はSweetyさんからお借りしています

え?なんだか、浮かない顔してるって?
そうなんだ。最近困っているんだよ。
何をって?
よくぞ聞いてくれた!
ボクの話を聞いてくれないか?
でさ・・・あのさ・・・
絶対に、絶対に、笑わない?約束だよ。


半年くらい前のコトかな・・・。
ボクは、この店の近くで、ヤクザ風の男数人に絡まれている女性を助けたんだ。
いくら、相手がヤクザ風で、しかも複数でも、ボクには大したコトない。
適当に相手をして退散させた。
大変な事になったのは、むしろこの後なんだ。

「ありがと。アナタ、とっても強いのね♪」
といきなり抱きつかれた。
ここまでならば、フランにはナイショだけど、以前にも何回かは経験したことがある。
だが、この瞬間にボクは固まってしまった・・・。

お礼を言ったその声は女性にしてはかなり野太く、抱きついてきた腕はかなり逞しく、体はかなり筋肉質だった・・・。
え?フランと比べるからそうなるんだろうって?
絶対にそんなことはない。世間一般の常識に照らし合わせたって、ボクの感想に間違いはないはずだ。だって・・・

「ワタシ、ローザっていうのよん♪この近くのお店で働いているの。
今日は、お礼にごちそうするから、是非寄って行って・・・」
そう言って、彼女が固まったまんまのボクを連れ込んだ店は・・・オ○マバーだったんだから。

その後、お店中の女の子(?)が、入れ替わり立ち代りボクのいるテーブルにやって来ては、お酌したり世間話をしたりして行った。もちろん、ローザはボクの隣にべったりと貼りついている。
あれやこれや、イロイロ話をして(ほとんどローザが一方的に、だけど)いるうちに、ボクは酔いが回って寝こんでしまった・・・らしい。

朝になって目が覚めたら、ボクは、レーシングチームの事務所のソファーに寝かされていた。
「よ!色男。目が覚めたか?・・・。」
二日酔いでガンガンする頭をダマしダマし、ようやくの事で起きあがると、チーフの佐々木さんが、冷たい水をくれた。
そして、昨夜、何があったのか、思い出せないでいるボクに、佐々木さんはこう言ったんだ。
「おいおい、昨夜何があったのか、覚えていないのか?」
自慢じゃないけど、ボクはお酒はからきしダメで、ビール3本も飲めば、もうデキアガッテしまう。
そして正体もなく寝こんでしまうんだ・・・。我ながら、情けないけどサ。
そのことをよく知っている佐々木さんは、事情を説明してくれた。

酔いが回って寝こんでしまったボクを、店の外に放り出すわけにも行かず困っていたところ、店の女の子(?)の一人が、レーサーとしてのボクの事を知っていて、ココ(事務所)に電話してきたと言うのだ。
折り良く、ココにいた佐々木さんが彼女たちに運ばれてきたボクを受け取って、ココに寝かせてくれた、ということだ。

「ローザって言ってたっけ、あのコ。随分とお前の事を心配していたぞ。見かけはあんな風でも、根は優しい、いい子なんだな。お礼の電話くらいしておけよ」
そういう、佐々木さんの声に見送られる様にして、ボクは研究所に戻った。
ローザが優しいいい子だってのは、ボクだって判ってる。
でもさ、ローザには申し訳ないけど、苦手なんだ、ああいう強引なタイプ・・・。

それから1週間くらい、ボクの携帯にひっきりなしにローザからの電話がきたんだ。
この間、フランが公演のために不在だった事にどれだけ感謝したことか・・・。

え?なぜ、ローザがボクの携帯の番号を知っているかって?
あの日、事務所から帰った後、夕方くらいに、ローザの携帯にお礼の電話をいれたんだ、佐々木さんに言われた通りに。

断っておくけど、ローザの携帯の番号は、あの時くれた名刺(もちろん、仕事用のだ)に書かれていたんだ。別段、後でどうこう、って下心なんてあるわけないじゃないか!
ボクは、事務所に運んでくれたお礼だけ言って、電話を切ったんだ。
だけど、ローザの携帯には、しっかりと、ボクの携帯の番号が記憶されていたってワケさ。ホント、マヌケな話だけどさ・・・。

ローザからの電話もかかってこなくなって、一安心した頃、フランが研究所に帰ってきた。
ボクの生活は完全に普段の通りに戻った、ボクは、そう思っていた・・・。

ある日、久しぶりに、ボクはフランと二人で映画を見に行った。
彼女が見たがっていた、フラン曰く「ちょっと甘めのラブストーリ」で、正直言ってボクはムネヤケするくらいだったけど、彼女が喜んでいるならばそれでいいか・・・、そんな気分だった。

映画を見終わって、その辺の喫茶店にでも・・・と、街中をそぞろ歩いていたら、いきなり、背中をバシッ☆と叩かれて、背後から、例の野太い声に襲われた。
「あらぁ〜〜、シマムラさんじゃないのォ〜〜♪オヒサシブリ」

振り返るとそこには、案の定、ローザがいた。
<ちょっと、ジョー、コレいったいどういう事よ!>
フランが、キツイ目でボクを睨みつけ脳波通信でこう言ってよこした。
<え・・・あの・・・その・・・>
と、しどろもどろになって、それでも懸命に事情を説明しようとしていたのだけど、
「あらぁ、こちら、シマムラさんの彼女ぉ?そういうワケだったのね。
いいわん、二人とも、ワタシの部屋に寄って行って♪この近くなのよん。」
と、有無をも言わさない例の調子で、ローザの部屋へと拉致されてしまった・・・。

ローザの部屋に上がり込んで1時間もたった頃には、ボク達はいや、正確に言うと、フランとローザの二人は、かなり盛りあがっていた。
最初疑いの目で見ていたフランも、ローザから事情を聞いて、誤解を解いてくれたようだった。それは、ボクもローザに感謝しなきゃならない。それは、判ってるんだ。いや、本心からそう思っているさ。
そのうちに、フランとローザは、よほどウマが合ったのか、ボクそっちのけで盛りあがり始めたんだ。
いや、ソレはソレでいいんだけどね・・・。

そして、ローザの友達も4,5人呼んで、宴会が始まってしまった。
ローザの部屋がある、そのマンションはお店の寮として、何室かを借り上げているらしく、ローザの同僚が何人も住んでいたんだ。
フランは、よっぽど楽しかったのか、いつもの倍くらいのピッチで飲み始めかなり酔っ払ってきた。

ハタから見ると、女性が集まって和やかに(?)飲んでいる風にも見えなくもないが、本当は、いや、ボクから見れば、オオカミの群れ(ローザ達が知ったら怒るだろうけどね)の中に子ウサギが1匹放たれたような状況だ。わかるだろ?
しかも、フランは完璧に酔っ払うと・・・。やっぱ、まずいよなぁ・・・。
そう思ってボクは普段のボクらしからぬ強引さで、なんとかフランを連れて脱出したんだ。

ソレ以来なんだよ・・・。
フランったら、ボクとケンカしたりすると、すぐにローザのところに駆け込んじゃうんだ。
で、ローザが怒ってボクに電話をかけてくるんだよ。
ローザの怒声の向こうでは、フランのすすり上げる声が聞こえてさ。

きっと、お店じゃヤケ酒飲んでるはずだから、ひどく酔っ払う前にフランを連れ戻さなけりゃならない。そう思って、速攻、フランを連れ戻しに行くわけなんだけどさ。
店に行くと、決まって、フランが
「ローザおねーたまぁ〜〜」
なんて、酔っ払って呂律が回らない様子で愚痴をこぼしているんだ。
で、ローザが「そぉなのぉ〜〜、フランちゃん。」
なんて調子でフランを宥めている。ボクの心境はフクザツだよ、かなり・・・。
フランの誤解だって事がわかれば、というか、ローザがそう思えば、どうって事無く済むんだけど、たまに「ボクが悪い!」ってことになっちゃうと、始末が悪いんだ。
ローザがボクに説教を始めるんだよ、ボクは、一刻も早くフランを連れて帰りたいのに・・・。
それでも、なんとか謝り倒して、ゴキゲンを取って連れて帰ってくるんだけどさ・・・。

え?ああ、そうさ。今もフランはローザの店に行っちゃっているんだ。
きっと、また今頃、ローザに愚痴っているよ。
また、ケンカしたのかって?
今度の日曜日に、チームのミーティングが入っちゃってね。
彼女と約束していたんだけど、ソレがパーになっちゃってさ、それでさ。
フラン、今度、見に行く映画、とっても楽しみにしていたんだ。
そこへもってきて、連絡の電話入れてきたのが、事務所の女のコでさ。
余計にオカンムリってわけさ。

そんな事で拗ねてるなんて、カワイイって?
そりゃ、そうだけどさ・・・。でもさ、・・・(溜息)。

え?そう、度々オ○マバーに愚痴りに行かれちゃ、支払いのほうも大変だろうって?
あのさ、どういう心配の仕方してるわけ?
そっちの方は大丈夫なんだ。
フランったら、店のママにも気に入られちゃってさ、しかも、フランがいると他のお客が長居してくれるんだって言って、フランは特別待遇なんだ。

あ・・・ほら、ローザから電話だ。
「◎×□?@△!!」
あ゛〜〜今日はまた、いつになく大声だな〜。
かなり怒ってるみたいだ・・・。フランったらローザに何て言ったんだろう?
無事に連れて帰ってこられるかな〜・・・
じゃ、ボク、行くよ。
フランが心配だからね・・・。




                              map / menu




                                                   2003/07/17