On the 1st month

このページの壁紙はちあふるさんからお借りしました


最初から、こうなるって事は僕にはお見通しだったんだ。
初めてジョーがフランソワーズと出会った瞬間のあの表情を見ればね。
ジョーの表情といったら・・・。くくく・・・(笑)
普通、あんな状況なら誰だって頭の中はたくさんの疑問符で溢れているものだ。

自分はどこにいる?
今まで自分の身に起きた事は?
自分の目の前にいる彼らは何者なんだ?
自分はどうすればいいんだ???????


いや、最初のうちはそうだったんだよ。僕の指令にもその疑問を持ちながらも取り敢えずという感じで従っていた。
でもさ、ジョーと来たら、フランソワーズを見た途端、頭の中身がからっぽになっちゃっていたんだよ。もちろん、ほんの一瞬、1、2秒の間だけどね。
で、次の瞬間に浮かんだのが
「こんなキレイな女の子がいるなんて・・・」
ってことだった。

あ、断っておくけどさ、僕はもちろん、積極的にジョーの心の中を覗こうとしたわけじゃない。
ジョーの意識のほうが勝手に僕の頭の中に流れ込んで来たんだよ。相当インパクトが強かったらしいね、彼にとっては。
何もない、真っ白けな意識がものすごい勢いで、さながら雪崩のように流れ込んで来たんだからね。
一瞬の事で僕は助かったのかもしれない。あの状態が30秒続いていたら、僕はパニックを起こしていたかもしれない。あんな事、初めてだったからね。

とにかく、ジョーは一目ボレだったと思うよ。自分では自覚していなかったようだけどね。
それにしても、その事に気がつくまでに、あんなに時間がかかるなんて、思いもしなかったよ。
これから死ぬかもしれない場所に赴くのに、そのほんの少し前に気付くなんてさ。
ジョーって、こういう事に関しての間の悪さはホント天下一品だと思うよ。
でも、だからこそ、彼らしいって言えばそうなんだけどね。

ともかく、ジョーは無事に帰って来た。いや、「無事に」と言うのは語弊があるかもしれない。もう少しで本当に死んじゃうかもしれなかったんだから。それでも、持ち前の生命力とフランソワーズの看病と祈りのお陰で、彼は僕達のところに帰って来た。

で、あんな事があったんだから、ジョーももうちょっと積極的になるかと思ったんだけどさ。
表面上は全然変わらないんだよね。じれったくなるくらいにね。
ちょっと水を向けてやるとすぐに真っ赤になっちゃってさ
「べ・・・別に、ボク達はそんなんじゃ・・・。」
なぁんてさ。

そんなもこんなも、ドウにかなってもらわない事には、傍で見ている僕達だって落ち着かない。っていうか、見ていてイライラするっていうか、じれったいっていうか・・・。
今度また、地下帝国の時みたいな事態になったら、どうするんだよ。
僕はまっぴらだよ、あんな風にフランソワーズに泣かれるのは・・・。

そう思っていたら、いつのまにか水面下で事態は進展していたらしい。
なぁんか、最近フランソワーズが綺麗になったなと思っていたんだ。
で、気をつけて見ていると皆がいる前でも二人でさりげなく目と目を見交わしている時があるんだ。
なんか意味ありげにさ。

そうかと思うと、フランソワーズが泣きかけているような表情(かお)でリビングのクッションに八つ当りをしているのを何度か目撃したことがある。何かを小声でブツブツ言いながら、いつも同じクッションを殴っているんだよ。
3回目に見かけた時に、僕はあることに気付いちゃったんだ。彼女がいつも八つ当りしているクッションってさ、ジョーがリビングのソファで転寝する時にいつも胸に抱きしめているクッションだったんだよ。

で、こんな時は、必ずって言っていいほど、ジョーは外出中なんだ。ジョーの外出中はいつもそうかっていうとそうではないんだけど。きっと、彼女がそんな風にしている時って、ジョーがフランソワーズの約束をすっぽかしちゃったりした時なんだろうね。

こんな風な二人の間柄に、多分、もう皆が気づいているはずだ。
気付かないフリしているだけなんだよ、みんな。あ。もちろん、僕もだけどね。
え?知らないフリして、二人をからかうのが楽しいからだろうって?
んーーー、まぁ、ほんの少しはそれもあるけど・・・。

でもね、みんな、二人に関してはそれぞれの想いってものがあるらしいよ。
え?僕?
そりゃ、二人には幸せになってもらいたいサ。
ジョーはともかく、フランソワーズの泣き顔は見たくないもの。

不公平だって?
ふん、そんな事あるもんか。
ジョーは僕の大好きなフランソワーズを一人占めしているんだからね。
そっちの方がよっぽど不公平というもんだよ。

だからさ、もうちょっと二人をからかって楽しんだってバチは当たらないと思うよ。
だってさ、彼らはまだ、二人の関係を隠しておきたいらしいし、僕達はある意味彼らの希望を叶えさせてあげているわけだしさ。




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                                           2005/02/14