とある日の夜、ジョーはとアルベルト、ジェットと共にギルモア邸のリビングでDVDの映画を見ていた。
ギルモア博士がメンバーの為に特注した大きなソファにはジョーとアルベルトがかなりの間隔をあけ座っており、2人の足元の毛足の長いラグにはバドワイザーを手にポテトチップスをパクつきながらジェットがねそべっていた。
時折、ポテトチップスの破片がラグに落ちるのを「フランソワーズに見つかったら厄介だな。」と苦々しい思いでアルベルトが見ているのも知らずに、だ。
そこに風呂上りのフランソワーズがやってきた。
「皆で何を見ているの?」
「昔の映画だよ。フランも一緒に見る?」
ジョーに誘われてフランソワーズが断るわけもなく、彼女はストンとジョーの隣に腰をおろした。
普段ならば、風呂上りの彼女がまとう甘い香りにたちまち煩悩の塊と化してしまうジョーだが、ココは公の場であるリビングであり隣と足元には気の置けない仲間ではあるが、他の男達もいることなのでフランソワーズのことは勤めて頭の片隅に追いやり映画に没頭した。
そのうち不意にフランソワーズがうっとりして
「あら、ステキ!!あんなの私も欲しいわ。」
と言った。
「ぶっ・・・」
飲んでいたウーロン茶を足元に寝転がっていたジェットに吹きかけ、とたんに真っ青になるジョー(ただし、ジョーが真っ青になったのはジェットにお茶を吹きかけたからではない・・・)、
「おわ!きったねーな、ジョー」と叫びながらも笑いを堪えながらアルベルトと目配せしあうジェット。
3人の脳裏には瞬時にある場面が浮かんだのだ・・・
フランソワーズの制止も聞かずにフラフラと他の女の方へ歩いて行くジョー。
「ジョー、行かないで!」
と叫びながら数珠を取り出すと一心に経文を唱え始める。
すると、経文に反応して金の輪が絞まり、頭を抱え苦悶するジョー・・・
リビングで見ていた映画とは「孫悟空」であり、フランソワーズが目にしたシーンは、言うことを聞かない孫悟空を懲らしめるために三蔵法師がお経を唱え孫悟空の頭の金の輪で絞め上げるシーンだったのだ。
「そりゃないよ〜〜〜、フランソワ〜ズぅ〜〜〜」
涙目でジョーがフランソワーズに訴えると
「え、どうして?」
元から大きな瞳をなおも大きく見開いてジョーを見つめるフランソワーズ。
「だって・・・だって・・・」
どう言って説明したものか戸惑うジョーにフランソワーズの一言・・・
「あのお坊さまのブレスレットみたいなもの、やっぱり私なんかが身に付けたりしたら、罰当たりな事なのかしら?」
「「「ぶ・・・ぶれすれっとぉ?」」」
なんのことはない、フランソワーズは三蔵法師の数珠みたいなブレスレットが欲しい・・・というのだ・・・。
「まぁ、お前さんなら似合わんこともないな・・・な、ジョー?」
この場を何とか取り繕おうとするアルベルト。
その彼の努力に報いたいと思うのだが
「で、フランはあの『ぶれすれっと』で何をするの?」
などと、なんだか墓穴を掘っているような質問を返すのがやっとの哀れなジョーであった・・・。
「お前、こういう時には『うん、君になら絶対に似合うよ』とかもうちっと気の利いたことを言うモンだろが!」
心優しいジェットとアルベルトは、口には出さなかったが心の中で突っ込んだ。
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2008/01/10