「ヨミ編」その後・・・
もうひとつの

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ふはははは・・・・・




諸君、私の名はスカール。ご存じの方も多いかと思うが、元ブラック・ゴーストの総統であーる。
地下帝国ヨミでの戦いで、ゼロゼロナンバー達にブラック・ゴーストを繊滅され、しかも、成層圏の魔神像の中で009を倒すことに夢中になり過ぎ、あれほど忠誠を尽くし総てを捧げてきた、ブラック・ゴーストの首領(=3つの脳みそ)に「私達の体を壊してどうするの!」
とあっさりと処刑されてしまった、あの、スカールである。

一度は、009にエネルギー炉に突き落とされて
ぁ〜〜〜かぁ〜〜〜ぬぁ〜〜〜!!」
と断末魔の雄叫びを残し基地諸共爆死かと思わせておいて実はしぶとく生き残り、そして、華麗なる復活を遂げたかと思うと、今度は子供の声で
「もう要らない」
などとほざかれて雲散霧消させられてしまった、その私が、なぜ、こうしているか?





あの時、魔神像の爆発と共に宇宙空間に投げ出された009は、ヤツを助けにきた002と共に大気圏に突入し、燃え尽きる寸前のところを001の超能力によって救出されたようだが、実は私もあるお方の超能力によって助けられていたのだよ。
それも、どういうわけか、生身の身体で生き返ってしまった。いや、それさえも、あのお方のご意志なのかも知れぬが・・・。

ま、生身で蘇ったからあの髑髏そのものの忌まわしい姿ではなく、このようなハンサムボーイ、あいや、今の世の中で言うところのイケメンな姿をしておるのだがな。
断っておくが、アノお方にムリヤリお願いしてこのような姿にしてもらったわけではないぞ。この姿はサイボーグになる前の、私本来の姿なのだよ。どうだ、恐れ入ったか!

これでもう002のヤツに「忌々しい髑髏のお面」呼ばわりされる事もないわけだ。しかも、ヤツも真っ青のイイ男であろう?
アヤツよりも私のほうが数段男っぷりが上であろう??ふぁ〜はっはっはっは!

なに?姿かたちは変わったが、その大仰な、オーバーアクション気味の喋りはちぃ〜〜〜っとも変わらんとな?ほっとけ!!

あーーーところで、どんな組織であっても、その実力者の地位にいるという事は、好き勝手になんでもし放題、諸君らはそう思ってはいないだろうか?
総統たるもの、その地位に甘んじてふだんはふんぞり返って部下をいいようにアゴでこき使っているだけと思ってはいないだろうか?

だとしたら、それはとんでもない誤解なのであ〜る。
実力が勝負である悪の組織であるBGで総統の座についてはいても、それは表向きのこと。実際にはしがない中間管理職。
普段は、総統として采配を振るう私も、肝心なところで本当の首領たる脳みそ達と意見が合わなかったり、失敗をしたりすると、情け容赦なく切り捨てられる運命なのだよ。

諸君らも見たであろう?魔神像の中であの脳みそ達がいとも簡単に私を切り捨てた様を・・・。
総統である私とて、ヤツらにとっては下っ端の一兵士となんら変わりはないのだよ。

いいや、立場上、私には愚痴をこぼしたりする朋友が存在するわけがなく、全くの孤独である。その分だけ下っ端よりも辛いんじゃないかと思うこともあるくらいだ。
所詮はただの試作品に過ぎないゼロゼロナンバー達が、性能は遥かに彼らを上回る敵(つまりブラックゴースト)のサイボーグを倒してきたのは、数字的な性能なんかではなく、チームワークのお陰なのではないのか?今頃になってそう思うようになった。
彼らの強さは仲間がいてこそなのだ。

そして、我が身を振り返ってみれば、私に忠誠を誓っている部下達ですらも、実は私の失脚をを願っていたりする・・・。私の後釜になる事を狙っていたりするのだ・・・。
悪の組織とは、生易しいものではない。その総統であり続けるということは、決して楽なことではないのだよ。
私がブラックゴーストの総統であり続けるその為には、身も心も休まる時はなかった。

そんな事も手伝って、私は「悪」というものにほとほと嫌気がさした。



そして復活した私は、長い間忘れていた「善の心」を取り戻した。
そうすると、憑き物が落ちたように、実に晴れ晴れとした気分になった。
ブラックゴーストで過ごした日々はただの悪夢の連続にしか過ぎなくなったのだ。


以前はその破滅を願っていた、人の世の役に立ちたいと心から思った。


あのお方のお力添えもあって、なんとか、この社会に紛れこんだ私は、死に物狂いで働いたのだ。

地下帝国「ヨミ」での闘いの後、ゼロゼロナンバー達が、ブラック・ゴーストの残党達が設立したネオ・ブラック・ゴーストや、ちゃっかりとその総統に収まっていたあの三つ子のサイボーグ達と戦っていたことも、そのあと、コマダー星からきたアジ・・・いや、イワシ・・・これも違う、おおそうだ、鯖・・・もとい、サバとかいう子供と一緒に宇宙に旅立った事も知っておる。

ここだけの話だがな。あのお方はもしかしたら、サイボーグを復活させる時は生身の人間に戻して復活させる事しかできないのでは?と思ったのだよ。コマダー星で、自爆した004が生身に戻って蘇ったと知った時にな。
私と全く同じだからな。いや、まったくもって、バチあたりな事なのだがな。
そう、「あのお方」と言うのは、偉大なる宇宙の意志、「ボルテックス」様なのだがな。

何ぃ?オーディンかと思っていた?
ぶぁ〜かぁ〜なぁ!!確かにオーディンは神ではあるが、ヤツの能力はたかだかほんのちょっぴり先の事を予知をしたり、テレキネシスで物体をほんの少ぉ〜し動かしたりする程度だ。ウソだと思うならば、新ゼロのDVDでもよぉ〜っく見直してみるがよい。その程度の事なら赤ん坊サイボーグの001でさえやっておるわ!

と・・・とにかく、ボルテックス様のお力は、オーディンなんぞとは格が違うのだ。

何、「お前だってボルテックスの力を見縊っているだろうが」とな?
そ・・・それはだな、ほんの一瞬の気の迷いというものだ。心の中をチラッと過ぎっただけなのだ。決してボルテックス様のお力を見縊ったりしてはおらん。断じて、見縊ったりはしておらんぞ。



あ〜・・・コホン。
ともかく、話を元に戻すがな、ゼロゼロナンバー達がそうやって過ごしていた約10年程の間に、私は死に物狂いで働いたのだよ。
そりゃ、そうであろう。私だって、この社会で生きていくのには、住む場所や食べる物、着る物が必要だ。もはや私はサイボーグではない、生身の人間なのだから、飲まず食わずでいたら3日と持たないのはわかりきっている事だ。

あのお方が、私をこの社会に送りこむに当って、ニセのプロフィール(経歴や戸籍など)と住む場所、仕事につくまでの諸費用として、幾許かの現金を用意してくださったが、それだっていつまでも残っているわけがなかろう?
なにせ、この日本は物価が目の玉が飛び出るほど高いのだよ。
こんな下世話なこと、BGの首領に収まっていた頃にはトンと考えもしなかったしな・・・。

そりゃそうであろう?
世界を相手に、兵器を売って売って売りまくる、その為には手段は選ばない、それがBG団なのだぞ。
その首領たる、この私が大根1本、卵10個の値段なぞ知るわけがないし、そんなこと知らなくとも良いことなのだ。

とにかく、私は生きていくための糧を得る為に、職を捜すことにした。
そしてブラックゴーストにいた間は、実力だけが頼りだったが、実社会ではそうは行かないことを知ったのだよ。
実力にモノを言わせていたら、すぐに刑務所送りになってしまうからな。

何日も職探しを続けてやっと見つけた最初の仕事は、ホストだった。
職を捜して繁華街をふらついている最中に、スカウトされたのだよ。
諸君も見ての通り、私のこの美貌。スタイリッシュな着こなし。洗練された身のこなし。知的で優雅な会話。どれをとっても、ホストとしては魅力的であろう?

もちろん、その時は「ホスト」がどんな職業かは知らなかった。
当たり前であろう?私がまだ人間であった頃にもそんな仕事は存在しなかったし、BGにも「ホスト部門」は存在しなかったのだからな。
時代が時代だったから、そういうものの存在も知られていなかったし、第一BGには女性は少なかったから、需要がなかったのだよ。

ぬゎにぃ?兵器部門では時代の最先端を行くBGもそっちの方面では意外にも時代遅れだとぉ?ほっとけ!

かつて、NBGがエーゲ海のアフロディーテ島に”休暇用”の施設を作ったそうだが、外部には知られてはいないがBGにもそれに類する施設はあったのだよ。無論、男性専用のな。

NBGのやつらは、世界中の美術品や有名無名を問わず美しい女達を片っ端から掻っ攫って世間を騒がせた挙句に、日本でこともあろうに003を攫って下っ端団員の相手をさせようとしたお陰で、00ナンバー達に全滅させられたがな。

我がBGはそういうドジは踏まぬ。なにしろ、人目につかぬように、秘密裡に事を運ぶのはお得意であるからな。
事実、00ナンバーどもを攫ってきた時も、決して世間様で騒がれる事はなかったくらいだからな。


おお、そうだ、話を元に戻さなくてはいかんな。
ただ、「女性に愛と夢を与える職業だ」というスカウトレディーの言葉に惹かれて私はホストになった。

今までの私は、BGの首領として、世界中の人々の夢や希望を蝕んできた。ごく一部の「世界を我が手中に!」などという輩の夢はある程度は叶えたかもしれんがな・・・。
そんな私でも、人に夢を与えることができるなら・・・と思ったのだよ。

後で知ったのだが、私が入店したその店は日本でも一二を争う有名店でその華やかな外見とは裏腹にホスト間の競争も熾烈を極めた。
まさに、ブラックゴーストも真っ青な足の引っ張り合いが繰り広げられたりしていた。
それをなんとか掻い潜って店のナンバー1に落ち着いた頃、私は気づいてしまった。

そもそも私がこの仕事に足を突っ込んだきっかけになった「女性に愛と夢を与える職業」と言う言葉・・・。
だが、我々が店に来る女性に与える「愛」も「夢」も幻に過ぎない。
我々は「愛」と「夢」を与える代価として、金品のみならず実に様々なものを、相手の女性から毟り取ったのだ。

そして、毟り取るべきものがなくなったと見るや、まるで掌を返すようにお払い箱にしてしまう。
そう、「金の切れ目が縁の切れ目」と言う言葉通りなのだよ。
どうだ、ブラックゴースト顔負けの阿漕さであろう?まぁ、ブラックゴーストと違って、ホストクラブは命までは毟り取ったりはしないがな。

ホストとしての生活に嫌気が差してしまった私は、ホストクラブを去ることにした。
退店を申し出た時、店側が「ここまでホストとして育ててやったのだから、最後くらいは店に恩返しをしろ」と言うので、仕方なく誕生パーティーと言うものをやった。

1週間ほど前から馴染みの女性客に招待状を配り、「ゼヒきてくださいね♪」などと色目を使い、来店した客には大金を使わせまた、プレゼントとして豪華な品々を貢がせた。プレゼントの品々はもちろん、店に没収されたがな。

なぜ、「引退」ではなく「誕生」のパーティーなのか?
店のオーナーに聞いたら、ホストを辞めるということによって、昨日までの私ではない、新しい私が誕生するのだから、だから、「誕生」でいいのだ・・・などとわかったような理屈を並べられた。

実の所は、店を辞めたとなると今まで私を目当てに通っていた客を他の店に取られてしまうことのないように、私は病気療養中であるとでも言い訳していつかは私が出店すると期待させて店に通わせる。そのうちに、他のホストに気持ちが移るのを期待してのことだったようだがな。なんと悪知恵の回る事だろうよ。か〜な〜り〜浅はかではあるがな。


次に就いた仕事は、建設現場の誘導係だった。
なに?ホストの次が工事現場では極端すぎる?ほっとけ!

ホストを辞め、それまでいた店が借り上げていた高級マンションにもいられなくなった私には、「食」と「住」が保証されていて尚且つ給料が良い、この仕事はとても魅力的だったのだよ。
それに、自分の働いた結果が形として残るということに魅力を感じたりしたしな。
BGは、破壊するのみであったからな。

で、最初はもっと実入りの良い建設工の仕事を希望したのだが、「あんちゃんには無理だと思うが、まぁ、試しにやってみな。」と言われて働き出したその初日に、足場の間からうっかり下を覗いてしまい、そのあまりの高さに目を回してしまったり(実際は確か3階くらいの高さだったと思うが、でも、建設現場の足場から覗いたその高さは想像を絶するものなのだ。ウソだと思うのならば、実際に覗いてみるが良い。目を回す事請け合いだ。)、投げ渡されたセメントの袋を受け取り損なって落としてしまったり・・・。
そんな事の連続だったものだから、怒り狂った現場監督にクビにされかけたのだ。

「彼はこの仕事は初めてなのだから、もう少し大目に見てやって欲しい。」
と現場監督に取り成してくれたのがなんと!005だったりしたのには、さすがの私も驚いたのだが。

そんなわけで、初日の午後には、誘導係をやっていた。
傍で見ていると、簡単そうに見えるのだが、実はあれでなかなか奥深い仕事ではあった。
衆人監視の中、一人笛を吹き旗を振って回りの者を誘導したり、時には交通整理をするのが私の任務なのだが、軽快な笛のリズムに合わせて流れるような動きで華麗に誘導するのは、かなりの熟練を要するものなのだ。

しかも、周囲の動きを瞬時に見極めて、無理なく無駄なく誘導するにはどうすればよいかを、これまた瞬時に判断するのだ。
どうだ、なかなかの頭脳労働であろう?
しかも、かなりの高等テクニックとセンスを要求される。

時給は建設工には劣るが、そんな困難さを克服するその喜びに、私は結構満足して毎日働いていた。

クビになりかけた初日、現場監督に取り成してくれた005とは、その後何度か一緒に食事をしたりした。
最初のうちは私がブラックゴーストの総統のスカールであったことが、いつバレるかとヒヤヒヤものであったが、そのうちにそんな心配はしなくなった。

彼には001のようなテレパシーで他人の心を読む能力はないが、物事の本質を見抜く力はそれに勝るとも劣らない。
いつだったか、彼に
「お前を見ていると、以前敵だった男を思い出す。何処とは言えないが、何かが似ているような気がする。」
と言われ事がある。多分、仕事帰りに立ち寄った赤提灯あたりでの事だったのだと思うのだが。

その時は、「バレたか?」と内心かなり動揺したのだが、
「だが、お前はあの男とは全く違う。殺気がない。心がとても穏やかだ。」
と、005は珍しく一杯やりながら、そう呟くように言った。
「そうか・・・。」
その時は、そう答えるのがやっとだったのだがな。

そう、私は生まれ変わったのだよ。身も心も、あの頃のスカールとは全くの別人に生まれ変われたのだよ。



他にも色々な仕事をしながら必死に学資を貯め、大学に通った。ブラックゴーストに入る前、私は2番目の夢だった、薬学を学んだ。
ちなみに、一番の希望はやはり政治学を学び、政治家になることだった。

だがしかぁ〜し、政治の世界は何かと誘惑が多いし、それに、ブラックゴーストのスカール総統だった頃の私を知る人間も相当数いるはずだ。

もちろん、真面目に公のために職務を全うしている政治家もいるにはいるのだが、己の私利私欲のためにしか動かぬ、とんでもない政治家もかなりの数いるのだよ、残念なことにな。
そんなヤツらの欲望をチョイと刺激して、BGは世界征服の基礎を築いてきたのだがな。

まぁ、そんな中で面識のあった政治家達でも、今の私の姿を見てブラックゴースト総統のスカールとわかるヤツは居らぬとは思うがな。
いかに、005が言ったように身のこなしが似ていようとも、私の姿は、生身だった頃の私に戻っているのだからな。
ぬぁにぃ〜?その大仰な濃い喋り方は以前とちぃ〜っとも変わらないだと?大きなお世話だ!

それに、善の心を取り戻した私は、もう、権力とは無縁の生活をしたいと切望していた。
権力とは無縁の場所で、形はどうであれ、人の役に立ちたいと思った。人目につくことなく、ひぃっそりと、な。


勉強をし、夜は学資と生活費を稼ぐためにアルバイトをし、そして薬剤師の資格を取った。
これも何かの縁と、自分が流れ着いたこの町に店を構えた。それがこの店「スカール堂」なのだが・・・。

ま、その後の話は、おいおい諸君らにも離して聞かせようと思う。
では、さらばだ・・・

ふははははは!!





<あ・と・が・き>

ずいぶん久しぶりにまともな(?)SSのアップです。
それにしても、ナゼに、ジョーくんのお誕生日と言うめでたい日に、よりによってスカール様のお話か???

それは偏に・・・
間に合わなかったからです!!(爆笑)

いえね、書きかけのブツは他にもいくつかあったのです。
ですが、一番完成させるのに時間がかかりそうにないブツが、これだったのです。

そんなわけで93至上主義者にあるまじき掟破りブツのアップという暴挙に出てしまったわけです。


そうそう、ちなみに、スカール様が作った「スカール堂」という薬局は、namakochanさん宅にあります「連載ニャララ」に出てくる、あの「スカール堂」だったりします。

実は、私・・・隠れスカ様ファンかもしれない・・・。
あの、ミョーにハイテンションな若本さん演じるスカールがことのほか気に入ってしまいまして、ソレが元で今回の掟破りブツができたようなものでして・・・。

あ、もちろん、93至上主義はやめていません。!!
痩せても枯れても(って、別に痩せても枯れてもいませんが・笑)、腐っても転んでも(どーゆーこっちゃ???・笑)、私は93至上主義でございます。
それは間違いございません。




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                                        2007/05/16 00:09