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《3日目》

 フランソワーズは、隣の部屋で岩田とゴローの言い争う声で目覚めた。
 「もう、やめよう。こんなことしていても、何にもならない・・・。」
 「何を、今更・・・。ゴロー、お前が臆病風に吹かれるなんて・・・」
 「彼女は、喋っちゃくれないよ。無駄だよ。」
 「ふんっ。彼女が喋らなきゃ、本人の口から直接聞くまでさ。
 オレも、女や子供に手荒なことはしたくないし・・・。」
 「何をする気なんだよ?」
岩田はそれきり、口を閉ざす。
 「やらなきゃならないんだ。美加のためにも・・・。」
 とポツリと呟いたのを最後に・・・。

 (イワン?彼は何をする気なの?美加って・・・?)
フランソワーズの問いにイワンは、なぜか答えようとしない。
 (ふらんそわーず、ボク、オナカスイチャッタンダケド)
 (もうっ!何を考えているの?イワンったら) 
 (大丈夫。ボクニマカセテ。ソノウチニ迎エガクルヨ。)
 (それ、どういうこと?ちゃんと教えて?)
 (フフフ、ソンナコトヨリ、みるくチョウダイ、ふらんそわーず)
 いくら訊いても、イワンはそれ以上教えてくれそうにない。フランソワーズは、ちょっぴり不満げに唇を尖らせがら、イワンのミルクを作りにキッチンへ行った。

 例によって、フランソワーズが作った昼食を摂ったあと、岩田から渋々受け取った封筒を抱えてゴローが部屋を出ていった。‘眼‘使って中を覗いたフランソワーズは、驚いた。
 (イ・・・イワン、脅迫状だわ、ジョー宛の・・・。)
 (知ッテイタヨ。彼ガアレヲ書イテイタ時カラ。)
 イワンはこんな時でも、至って落ち着いている。
 (で、どうするの?)
 (オナカ、スイタ・・・)
 (また、教えない気ね。)
 (ワカッチャッタ?)

 この様子を見ていた岩田が、不思議そうに聞いた(もちろん、二人の会話は聞えていないが)。
 「キミたち二人は、なんだか会話しているみたいだな。」
 「え?(聞えているわけないわよね)そりゃ、ずっと面倒みているから。」
フランソワーズは、少々あせって、答えにならない答え方をする。
 「それにこの子は、ちっとも泣かないんだな。」
 「そうね、それに、良く眠るの・・・。」
 「・・・・美加もそうだったな・・・」
ぽそっと、岩田は呟いたが、またすぐに
 「そんなこと、どうでもいい。まだ、話してくれる気にはならないのか?」
 「ええ。」
 「そう言うと思ってた。意外と頑固なんだな。でも、いいさ。最後の手段をとったから・・。オレにはもう時間がないんでね・・・。」
そう言い残して、岩田は別室に行ってしまった。




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