MayStorm

このページの壁紙はノンの素材部屋さんからお借りしました。

MayStorm
《act 3》

今日は故国へ帰っていた仲間たちも、ここ、ギルモア研究所に帰ってくる。彼らを迎え入れるためにフランソワーズは、朝から忙しい・・・。
しかし、心ココにあらずで、フト気がつけば、気持ちはジョーに向かっている。
(ナニを怒っているのかわからないけど、ジョーは私に怒っている。
いえ、・・・心当たりなら、あるわ。きっと、アノコトに怒っているのね。
でも、ソレなら誤解だって、きちんと話せば大丈夫。判ってくれるわ。)

一通りの準備を終えると、フランソワーズはジョーの部屋へと向かう。
戸惑いながらも、フランソワーズはジョーの部屋のドアをノックする。
「・・・・・」
予想通り返事はない。
「ジョー、ごめんなさい、入るわね。」

テーブルの上には、3時間ほど前に届けた朝食が手付かずのまま置かれていた。
フランソワーズは溜息をついた。
いくら2,3日飲まず食わずでも平気な身体だとはいえ、このままでいいわけがない。
「ジョー、起きているんでしょう?あなたに話したいことがあるの。」

ジョーの反応は相変わらず、ない。
しかし、気配は明かに起きていることを伝えてくる。
そこでフランソワーズは、ジョーの反応のなさには構わずに続けた。
「ジョー、あなた、あの事を怒っているんでしょう?
おととい、あなたが手伝いに来てくれたのに、アルベルトが手伝ってくれているからって、断ったこと。その後、あなたにナイショでアルベルトと出かけた事も、あなた、知っているんでしょ?
だから、怒っているんでしょ?
でも、あれは・・・」

と、フランソワーズがここまで言い掛けた時、階下から、大声が聞こえた。
「おーーーい!フランソワーズ、これ、どーすんだよ!!」
「ばか、ジェット、それっくらい一人で考えろ。」
大声の主を窘める声も微かに聞こえてきた。

(んっとにもう!なんで、こんな時に・・・)
「ごめんね、ジョー。
ちょっただけ待ってて。すぐ戻るから・・・。」
フランソワーズはそう言い残して、階下に駆け下りて行った。

すぐに戻ると言ったのに、10分たっても、彼女が戻ってくる気配はない。
「ったく、なんなんだよ・・・。」
フランソワーズに向けてとも、ジェットに向けてとも取れる、独り言を発し、ゴソゴソとベッドの上に起き上がった。
昨日の朝からベッドに篭りっきりなので、髪の毛が思いっきクシャクシャになっている。

「でも、あれは・・・」
フランソワーズの言いかけた言葉が、耳の奥に残っている。
(彼女は、一体何を自分に言おうとしていたんだろう?)
そう思うと、俄然気になりだしてきた。
本当のことを言うと、怒っているという気持ちは、もうとっくに無くなっていた。
ただ、それを認めてしまうことがシャクで、ついでにそれを彼女に知られることもシャクにさわるので、怒っているフリをしていたのだった。もっとも、ジョー自身、それを認めようとはしていなかったが・・・。
ただ、意地を張ってフテクサレテいたのだが、その意地が疑問に変わってきた今、なんだか無性に空腹を覚えるようになってきた。
最後に摂ったまともな食事がいつの事だったのか、俄かには思い出せないくらい昔の事に感じられて、取り敢えずサイドテーブルに置かれている食事を食べ始めた。

「うん、やっぱり、フランの作る食事は美味しいや♪」
ジョーが朝食(?)に舌鼓を打っている最中にも階下からは、いろんな声が聞こえてくる。

「おい、コレはこうすんだよな。」
「ええ・・・。」
「じゃ、アレは、どーすんだ?」
「ええと・・・。」
「ジェット、それっくらい、自分で考えろって、さっきから言ってるだろう?」
「だって、わかんねーモンは、聞いた方が早ぇじゃないか。」
「お前のそのツンツン頭は飾り物か?チッとは中身を使った方がいいと思うがな。」
「な・・・なにおぅ!!」
「もうっっ!二人とも、いいかげんにしてちょうだい。
ジェット、いい?ようっく聞いて!!
アレはああして、ソレはそっちにおいて、あそこのアレは、倉庫にしまっておいて頂戴。」
「だぁーーっ、そう一辺に言われても、覚えきれねーよ。」
「だーーかーーらーー!!」

「ジェット、お願いだから、いい加減に、私が言ったことをちゃんと理解&記憶してよ!!」
フランソワーズのそんな溜息混じりの独り言が聞こえてきそうで、ジョーは思わず苦笑してしまった。
そして、随分長い間フランソワーズの顔を見ていない気がして、無性に彼女に会いたくなった。

「でも、あれは・・・」
(一体何を言いたかったんだろう?)
ジョーは、答えを見つけられないまま、再び悶々とし始める。
(フラン、キミの口から直接答えを聞きたい・・・)
階下に下りて行ってそう言えばいいのだが、そうするのもなんだか憚られて
「すぐ戻るって言ったじゃないか・・・。」
と、ちょっとだけ、彼女にヤツ当たりしてみるのだった・・・。もちろん、彼女にわからない場所で・・・。





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                                                   2003/05/14