MayStorm

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《act 5》

カタン・・・
物音に目を覚ますと、回りにはギルモア博士とイワンを除いた全員が凭れ合うようにして眠りこけている。いや、よく見ると、フランソワーズもいないようだ。

(フラン・・・)
物音がしたキッチンの方に行くと、フランソワーズが一人で洗い物を片付けていた。
「手伝うよ。」
その声にびっくりしたようにフランソワーズは振り向いたが、嬉しそうに微笑むと
「ありがとう。でも、あなた、まだ酔いが残っているんじゃない?」
と言った。
「これくらい、もう大丈夫だよ。それに、僕が手伝いたいんだ。」
「そう?じゃ、お言葉に甘えて、お願いするわね。」

ジョーはフランソワーズの傍らに立ち、彼女が洗い上げた食器を拭き始めた。
ほんの少し手を伸ばせばお互いに届きそうな距離で、二人一緒に何かをするということが、随分久しぶりの事のように、二人には感じられた。
ちょっとだけ新鮮で、ちょっとだけ気まずい、そんな気分が二人を包む。

「「あの・・・」」
二人同時に言いかけて、思わず顔を見合わせた。
「君はさっき、僕に何を言いかけたの?」
しばらく、沈黙が続いた後、ジョーがこう、切り出した。
「私も、ソレを言おうと思っていたの。」

「おととい、私がアルベルトと話しててあなたを仲間ハズレにしたり、出かけたりしたのは・・・」
「多分、さっきまでの宴会の準備だったんだろ?」
「うふふ・・・わかっちゃった?でも、当たっているのは半分だけよ。」
「半分だけ?もしかして、残りの半分は明日?ジェットがさっき前祝って言っていたから・・・。
でも、何なの、前祝だとか、明日だとか・・・。」

ここまで聞いて、もう当然、ジョーは答えがわかっているものと思っていたフランソワーズは、思いっきり調子が狂ってしまった。

「何・・・って言われても・・・。」
フランソワーズが困った様に言いよどんでいると、リビングから、午前0時を知らせる鐘の音が聞こえた。
すると、
「もう、今日になったから、言っちゃっても良いわよね♪」
手にしていた食器を置くと、ジョーに抱きつき、ほんの一瞬唇を重ねた。
予想もしていなかった展開に、ジョーがどぎまぎしていると、
フランソワーズはイタズラっぽく笑いながら、こう言った。

「お誕生日、おめでとう!!ジョー」

「へ??????」
「ジョーったら、忘れちゃってたのね、やっぱり。今日はあなたのお誕生日でしょ?」
「・・・・・・・・」
「だから、今日ジェロニモやピュンマも戻ってきたんじゃない。」
「じゃぁ・・・もしかして、おとといのアレは、みんなその為に?」
「そうなの。本当はね、あなたをびっくりさせたかったんだけど、おとといから、あなたは機嫌悪くなっちゃうし・・・。
あなたに黙っているのも、もう、限界だわ。
それに、一番最初に、あなたにおめでとうって言いたかったし、ね。」

ここまで聞いて、ジョーの思考回路はやっと正常に戻った。
「ね、フラン、もう一度、言ってくれる?
あんまり突然なんで、僕、ちゃんと聞いていなかったような気がするんだ。」
「もう、ジョーったら・・・。」
意外なジョーの言葉に、フランソワーズは頬を染めながらも
「じゃ、リクエストにお答えして・・・。
ジョー、お誕生日、おめでとう!!」
と、ジョーに応える。
だが、ジョーはやや不満気に、
「あのさ・・・」
と、自分の唇を人差し指で指す。

その意味が解ったフランソワーズは、わざとムッとした表情を作り、
「もうっっ!調子に乗らない!コレ片付けちゃわなきゃ・・・。」
と、後片付けの続きを始めた。
ハイッとフランソワーズに洗い上げたコップを手渡されたジョーは、
それでも、やっぱり不満なので、渡されたコップはそのままカウンターにおいて、
いきなり、フランソワーズを抱きすくめる。
「やっぱりさ、ちゃんとおめでとうを言って欲しいな・・・。直接、ね♪」
そう言って、唇を重ねた・・・。





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