とある騒動と再会      そして・・・

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色々とあった2005年も過ぎ去り、2006年元日の朝。
ここギルモア邸の元日の朝はいつもの休日の朝よりも少なくとも2、3時間は遅く始まる。

毎年、「紅白歌合戦」が始まる辺りから、体内に摂取したアルコールが脳内にも循環し始め、メンバーが酔っ払い集団と化す。そして、「行く年 来る年」が始まり、全国の有名寺院の鐘の音がテレビから流れ始める頃にはその盛り上がりが最高潮に達し、年越しのカウントダウンが始まる。
年越しの瞬間、最高潮だった盛り上がりが、一気に爆発したかのように
「おめでとう〜!!」
の言葉と、ハグ&キスの嵐となる。

それは、再び無事に(つまり生きて)この瞬間を迎えられた事に対する感謝の念と、これからの一年を無事に生き延びられますようにとの祈りを込めた、乱痴気騒ぎなのだ。まぁ、アルコールが入ったせいもないとは言い切れないが・・・それは、この際なんの問題にもならないと思う・・・。

しかし、約一名、この乱痴気騒ぎを過剰なまでに警戒している若者がいたりする。自分の正直な気持ちにようやく気づいた数年前から、いかにしてこの「嵐」の中を自分の大切な人を守りきるか、クリスマスが過ぎた辺りから色々と計画を練っているのである。

そして、その計画は毎年まんまと的中し、目的は達せられているかのように見えていたが、その実
「他人の女に手を出すほど、こちとら落ちぶれちゃぁいねぇや。」
「彼は一見甘ちゃんのように見えるけどさ、本気で怒らせると怖いからね。」
「そうそう、なんと言っても最強のサイボーグあるからねぇ〜。」
「うむ。触らぬ神に祟りなし。この国の諺にあるとおりだと俺思う。」
という言葉に表れている通り、メンバー誰もが彼のその見え見えの行動に苦笑い(?)しながらも、彼が次の行動に移らなくても済むように気をつけたからである。

もちろん、一癖も二癖もあるメンバー達の事であるから、そう簡単にことが運ぶわけがない。みんなテキトーに彼を構って遊んでいるのである。
「そりゃ、当然のことですなぁ〜。彼は我々のマドンナを独り占めしているわけであるからして・・・。」
「ま、コレくらい楽しませてもらうのは当然の権利ってところだな。」
陰でこんなことを言われているとはつゆ知らず、ついでに遊ばれているとも思わず、当の若者は今年も躍起になって、あっても無きが如き計画を実行するのであった・・・。

ひとしきり乱痴気騒ぎが続いた後、酔いつぶれた者はその場で泥のように眠り込み、残った比較的元気な者達が近所にある神社に初詣にでかけた後、彼と彼女はそっとどちらかの自室に二人して引き上げる。
これがここ数年のギルモア邸での大晦日から元日にかけての定番の過ごし方となっている。
もちろん、彼と彼女の行動は、秘密裡に・・・と、当事者達だけは思っている。



さて今回も、例年に倣って年を越し、それから数時間後・・・。
いつものように(?)彼の腕の中で目覚めた彼女が、ほんの少しだけ違和感を感じる。
「ジョー・・・なんか変なの。」
彼女=フランソワーズが彼=ジョーを優しく揺り起こす。

「ん〜〜、フラン愛してるよ〜〜」
ふだんは子犬だの優柔不断だのと言われているジョーにしては、珍しく大胆な愛の告白をやらかし、その上フランソワーズを我が手に抱きしめようと両腕を前(上?)に突き出したが、既に起き上がってしまっているフランソワーズにはその腕は掠りもせずに空しく空回りをして自分の体を抱きしめる結果となってしまった。

大盛り上がりの宴会の後の緊張感、そしてそれから開放された後の過激な運動は、いかに摂取をセーブしていたとは言え、元々アルコールに対してそんなに強くない体質の彼にはかなりキツイものがあったようで、いつもならば一瞬にして正気に返るはずのその一言にも、まだ反応できず寝ぼけていたりするのである。
やがて此処に着地するであろうはずのフランソワーズの唇を受け止めるべく尖らせている、ジョーの唇がやけに生々しくも寂しい・・・。

こんな場面をもしBGのスカール総統が見たら、BG最大の「目の上のたんこぶ」のだらしない姿に大喜びするのだろうか?それとも、なぜこんなヤツが最強のサイボーグなのかと疑問に思うと同時に、ソイツに悉く敗れ去ってきた自分の手下ドモの不甲斐なさを嘆くのか?多少興味を引く所ではあるが、このオハナシとは関係ないことなので、うっちゃっておくことにして・・・。

「もうっ、ジョーったら・・・。や〜ね〜//////
あのね、人の気配がするの。」
「え?!!」

「人の気配」と言う言葉が、「もしやしてメンバーの誰かがこの部屋に乱入しようとしているのか?それとも、もしやBGか???」という懸念を呼び起こしジョーの意識を一瞬にして正常に戻した。
が、フランソワーズのいう「人の気配」が邸内からのものではなく、外からのもの、それもかなり微弱でありしかも自分が感じる事の多い種類のものである事を知って、ジョーは警戒態勢を解いた。

そして、念のため窓からそっと外の様子を確認すると、まだ心配そうにしているフランソワーズの耳元に優しく囁いた。
「フラン、大丈夫だよ。
彼は、敵じゃない。いや、敵と言えば言えなくもないんだけど、でも、心配することないよ。」
「え???」
「パパラッチだよ。
クリスマスの少し前辺りからだったかなぁ〜。ボクの周りをウロウロしてるんだ。もちろん、ここに戻ってくる時には完璧にまいてから戻ってきているから、ここがバレているはずはないんだけどな〜。」
「そうなの?でも・・・」
「でも・・・気になる?」
「ええ・・・多少はね・・・」
「じゃ、10分くらい待っていて。」
そう言うと、ジョーの姿がふ・・・と掻き消え、きっかり10分後またジョーの姿が現れた

「もう、ジョーったら加速装置使ったでしょ。」
「うん♪」
ジョーは悪びれる事もなく答える。
「だって、重大な問題だろ?」
「ええ、そりゃ、ここの場所が外部に漏れたりしたら大変な事になるけど。」
「いや、その前に、まず、キミの神経が彼に集中しちゃっていて、ボクの方にちっとも意識が向いていない。そっちの方がボクにとっては大問題なんだよ・・・。」
「え???」
「でも、その問題も無事に解決した事だし・・・♪」
(以下、新年早々につき自粛いたします・・・邪笑)



「ねぇ、ジョー。」
新年早々二度目の甘い甘いひと時を過ごした後の余韻がまだ残る中、フランソワーズは先ほどからの疑問をジョーにぶつけてみた。
「なに?」
「さっき、あなたがいなくなってしばらくした後、彼は慌てた様子でここからいなくなったんだけど、あなた一体何をしたの?」
「ちょっと、K駅に行ってきたんだ。
K駅に行って、彼がよくネタを売り込みに行く出版社の何軒かに電話をかけたのさ。『ハリケーン・ジョーがK駅にいる』ってさ。その後、アリバイ工作のためにいつもよりも少しだけ目立つように行動して、それから帰ってきたんだ。」

K駅はギルモア邸から程よく離れた場所にあり、徒歩10分ほどの場所には有名なT八幡宮もある。都心のM神宮ほどではないが毎年かなりの人出である。目撃者(=アリバイの証人)獲得には持って来いの場所である。

K駅に現れたハリケーン・ジョーがほぼ同時刻に目の前のここギルモア邸にいるとは彼の常識では考えられない事(なぜなら、彼は加速装置と言うものの存在すら知らないのだから)。
彼の標的である自分=ハリケーン・ジョーが別の場所にいるとなれば、こんな所に長居は無用となるわけだし、その別の場所がここからそんなに遠くない場所であるとしたら、迷わずにそこに向かうであろう。
ジョーはそう考えたのだ。事実、それは見事に的中した。

が・・・







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                                       2006/01/24