とある騒動と再会    そして・・・

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数日後、とある写真週刊紙をきっかけに、あの時なぜパパラッチがギルモア邸を張り込んでいたかがわかった。

まだ、ギルモア邸に滞在中だったメンバーの数人が、それぞれの外出先から図らずも同じ写真週刊紙を買って帰ったのだ。
表紙には
「F1界大激震!!
  ハリケーン・ジョーとジェット・リンクが同棲?!」

の大きな活字が躍っている。

リビングで在宅しているメンバーが作戦会議よろしく雁首を揃えてあれやこれやと議論しているところへ、買い物帰りのジョーとフランソワーズと、事務所からの帰り道でたまたま二人と出くわしたジェットがやって来た。

「お、みんな揃って何の相談だ?」
「また良からぬ相談でもしてるんじゃないの?(笑)」
「ええ?まさかぁ〜(笑)」
事情を知らないとは言え、いささか暢気過ぎる3人・・・。

一同の凍りつくような視線に招かれるようにしてそちらの方へ行ってみると、件の写真週刊紙の表紙の大見出しが否が応でも3人の目に飛び込んできた。

「ジョ〜〜、あなた、いつの間にジェットとそんな関係に・・・」
「ふ・・・ふらん、そんなことあるわけないじゃないかっっ」
「おうよ、俺さまにだって選ぶ権利ってもんがあらぁな!」
「ジェット、なんだよソレ!」
見当違いな口論を始めた3人に
「お前ら、いい加減にしろ!!そういう問題じゃないだろうが!!」
アルベルトの一喝が飛ぶ。

「「「ご・・・ごめんなさい!」」

「と・・・とにかく、これから何をなすべきか、だな。」
「まず、此処の場所を特定されては、今後どういう事態になるか想像もつかない。」
「一般のファンならまだしも、BGのヤツらがここを嗅ぎ付けないとも限らん。」

記事の中には、さすがに詳しい地名までは書かれていないが、本文をよく読んでみればある程度場所は限定されてくる。しかも結構大きめのギルモア邸の写真が掲載されている。
BGの力を持ってすれば、ギルモア邸の場所を突き止めることなど容易いはずだ。

さらなる問題は、この写真週刊紙が発売されてすでに4日が経過していると言う事である。
すでに相当数が販売されており、いかに彼らの様々な能力を駆使しても、騒ぎを起こす事なしにソレを全て回収するのは不可能であるし、もし、回収できたとしても、すでに読んでしまった人の記憶には記事の内容が残っているかもしれない。その全てを消し去る事はその数を考えるとイワンの超能力を持ってしてもできない相談である。いや、一般人の記憶ぐらいならばまだ良い。もし、BGに繋がりのある人物がその記事を記憶していたとしたら、どうなるか・・・。いや、事によったら、もうすでにBGにその情報が齎されているかもしれない・・・。

「せめて、雑誌が全国に輸送される前に察知できたなら・・・」
メンバー全員が頭を抱える。
超能力発展途上にあるイワンも、タイムワープの能力に関して言えばまだほんの微々たる物で、ほんの数分前後の時間移動しかできないのだ。とてもじゃないが、数日前までのワープはできない。

その時、
「その話、私に任せてもらおうか・・・」
という幾分高飛車な台詞が聞こえ、全員がそちらの方を振り向いた。

「あ、お前はケイン!!」
以前、イワンの父親であるガモ・ウィスキー博士と対峙した際、リナによって共に時空の彼方のラビリンスに飛ばされた筈のケインが何故ここに?
イワンとギルモアを除いた全員が「ケイン」に向けてスーパーガンを構える。

「いや、彼が私によく似ているという噂は聞いたことがあるが、私は・・・」
「移民計画(エミグラント・プログラム)の指揮官ノア!!」
ジェット、アルベルト、張々湖、グレートの4人が同時に叫ぶ一方、真っ赤になって俯いているジョーとフランソワーズの二人・・・。
そこへ、イワンがケインもとい、ノアにクーファンごとふよふよと近寄る。

「ヤア、ヤッパリ来テクレタネ。」
握手をしようと手を差し伸べるイワンに、一瞬戸惑いながらも人差し指を握らせるノア。
その仕草は、どことなくジョーに似ている。

「君がイワンか。赤ん坊だって事は知っていたが・・・」
「ふふふ。君ハ以前ニじょーノ頭ノ中ヲ調ベタンダヨネ。ソノ時ニボクノ情報モ?」
ノアと面識のないジェロニモとピュンマはどういうことなのかさっぱりわからず、きょとんとしていたが、手近にいたジェットに説明をしてもらい納得がいったようだった。

「ああ。だが、断っておくが決して他言はしていない。私としても、危険な事はしたくないのでね。」
「ワカッテイルヨ。トコロデ・・・」
「ああ、君の言いたい事はわかっている。そして私は、その為に来たんだ。」
「コノママデハ、君ノ存在ガ危ウイ。ソウダロウ?」
「そうだ。」

「「それって・・・」」
思わず大声を上げるジョーとフランソワーズ。他のメンバーもごくりと唾を飲む。
ついでに「二人が(ボク((私))達)結婚できないかもしれないってこと???」の言葉も飲み込む。

「というか、私がここに来る事はもう決定事項であったようだしな。
あの時(以前、ジョーの頭の中を調べた時)、今度の事もわかっていたんだ。」
「ソウカ。ソウイウ事ナラバ、頼ミヤスイヨ。」
「とは言うものの、過去の時代への干渉は最小限度に止めたい。」
「ソウ言ウダロウト思ッテイタヨ。」

「イワン、まさかと思うが、私の心を読んだのか?」
「イヤ、ワカルンダヨ、ナントナクネ。ダッテ、ホラ、彼ラヲ見テイレバ・・・ネ?」
イワンがホラと目配せした方にいる二人を見て、ノアは何事かを納得したようだった。
「なるほどね。ご先祖さま(=ジョーとフランソワーズ)を見ていれば、子孫(=ノア)の思考回路は自ずと推測がつくというわけか・・・」
などとボソボソ呟いたりしている。イワンがそれを見て苦笑しているのにも気づかずに・・・。

「おおそうだ、こんなことをしている場合ではない。
私も自分の仕事の合間を縫って此処へ来ているわけだから、さっさと片付けてしまおう。
君達もその方がよかろう。」

「私の役割は、君達を目的の時間に時間移動させればよいのだろう?」
「ソノトオリダヨ。」
「この時間への干渉を最小限度にするには・・・」
「コノ記事ガ書カレテイル最中ガイイ。ぼくガ書イテイル人間ノ記憶ヲ操作シテ、違ウ記事ヲ書カセル。」

「そんなメンドくせぇことしなくっても、そんな記事を書かせないだけでいいんじゃねぇの?」
頭脳派二人の会話に行動派ジェットが割り込む。
「イヤ、ソウハイカナイ。言ッタダロウ?過去ヘノ干渉ハ最小限度ニシナクチャイケナイ。」
「あの記事を書かせないということは、その記事が載るはずだったページに他の記事を書くことが必要になってくる。雑誌全体のページ数と言うものは決まっているしな。」
イワンとノアの二人がかりで説明(解説?)する。

「だから、あの記事と差し替えて不自然さを感じさせないようにするそういうわけだな。。」
「そうだ。」
いち早く理解したアルベルトに
「ふ〜〜ん・・・そんなもんかねぇ〜。」
と面白くなさそうにジェットが呟く。

「サテ、ムコウノ時間ニ行クめんばーダケド。アンマリ大人数ダト目立ツカラ必要最小限ノ人数デ移動スル。
マズ、当然ノ事ダケド、ぼくトのあ、ソシテ、じょートじぇっと、二人ハ加速装置ヲ持ッテイルカラ、実働部隊ネ。ソレカラ、探索ノ為ニふらんそわーず。コノ5人デ行クコトニスル。
何カ、意見ハ?」

「いいんじゃねぇの?」
「了解アル。」
「うむ・・・わかった。」

「デハ、10分後ニ出発スル。各自、私服デ集合スルコト。タダシ、万ガ一ノ時ノ為ニ加速ニ耐エラレル服装トスル。
ソレカラのあニハじょーノ服を貸シテアゲテ。」





きっかり10分後、全員がリビングに集合した。

「ねえねえ、ホント、血のつながりは争えないわね。
ほら、ジョーの服がぴったりなのよ。」

ちょっとだけ顔を赤らめているノアに気づく事もなく、フランソワーズはノアを見せびらかす。
その様子は、まるで七五三の晴れ着を身に付けた我が子を自慢げに連れまわる母親のようでメンバーは苦笑するのだった。もちろん、顔には出さずに・・・。

「サテ全員揃ッタネ。ジャァ 頼ムヨ。」
「ああ・・・」
ノアが持ってきた時空異動装置を作動させ辺りが光に包まれたかと思うと5人の姿がゆらりと揺れ、次の瞬間ふっっと掻き消えた。


「成功したのか?」
「ああ、多分ね。」

「さて、残った我々は、することないアルから、お茶でも飲んで待っているアルかねぇ。
グレートはん、手伝うヨロシ。」
「おう・・・」





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                                       2006/03/09