とある騒動と再開     そして・・・

このページの壁紙はe*tihwさんからお借りしています。

「みんな、お茶の支度、できたアルよ〜。」
意気揚々と点心を運ぶ張大人がキッチンからリビングに入りかけた時、、リビングの一角が光に包まれているのを見て立ち止まった。
「おっと、危ねえ!」
後ろからティーポットとカップを運んできたグレートがそこにぶつかりそうになった。


そのうちに光の中心辺りからゆらゆらと何やら見え始め、ほどなくしてそれはつい先ほどこの場所から出発して行った仲間達の姿になった。

「おう!今戻ったぜ。」
「・・・・・・・・・・」
まさか、こんなに早く戻ってくるとは思っていなかった留守番組の面々、しばし絶句。

「ボク達ガ出発シテドレクライ経ッタ?」
「そうさなぁ〜、10分たったかたたないかくらいだろ。」
「そうか。この程度であれば制御装置の誤差範囲内だな。」
「???」
「僕ラガコノ時空間ニ存在シナイ空白ノ時間ヲデキルダケ少ナクスル為ニ、可能ナ限リ出発シタ時ノ直後ノ時間ニ戻ッテキタンダ。」
「「「「「ふ〜〜〜ん。」」」」」
わかったような、わからなかったような返事だ。

「で、首尾は・・・」
「この俺様がいるんだぜ。上々に決まってるだろ?」
と得意げなジェットに
「イヤ、お前さんがいるからこそ心配なんだが・・・」
間髪いれずに突っ込みを入れるグレート。

そんなやり取りには取り合わずにアルベルトは
「うまく行ったのか?」
とジェット以外のメンバーに問う。

「論ヨリ証拠。
問題ノ本ヲ見テ見レバワカルヨ。」
イワンの答に「それもそうだ」とばかりに今度は件の週刊誌に群がる。

問題の記事は・・・見当たらない。
あの記事が掲載されていたページには某政治家の汚職事件のスキャンダルが載っていた。

「ふふん。成功したってわけだな。」
「それにしても、僕らがかき集めておいた情報がこんなところで役に立つなんて、想像もしなかったよ。
イワンは最初からわかってたわけ?」
「イヤ。最初ハボクモ、何ニ必要ナノカ全クワカラナカッタヨ。
確信ヲ持ッタノハ、記事ヲ目ニシタ時ダ。」
「ふ〜〜ん。」
感心したように唸るメンバー達。
ノアでさえも驚きを隠せないでいるようだ。

「何にしても、事件は無事解決したんだ。ちょいと一息入れようや。」
「一息って、おまはん、お茶を入れてただけアルね。グレートはん。」
「何をおっしゃるか。」

「漫才コンビはほっといて、せっかくの点心が冷めちまったらもったいないからとっとといただこうぜ。オレ腹減っちまった。」
と蒸し上がったばかりの肉まんを口の中に放り込むジェット。
が、すぐに
「う☆」
と叫んで、キッチンに駆け込む。
どうやら大慌てで水を飲んでいるようだ。
ギルモア邸の居間に笑いの渦が起こる。
ほんの1時間ほど前のあの緊迫した雰囲気とは大違いだ。

和やか〜な雰囲気にノアはふと自分をとりまく状況を振り返る。
第三次世界大戦の際に撒き散らされた放射能の影響で凶暴化した動植物たち。
彼らの襲撃と、そして、残存放射能の侵食により種としての絶滅の危機に瀕していた自分達人間。
最後の瞬間が秒読み段階となった時、自らの存亡を賭けてこの時代へとやってきた。
そこでジョーたちと出会い、そして再び、今度は太古の昔に向けて旅立った。

その後、あろうことか、時空の狭間(はざま)に飲み込まれ・・時空の嵐に翻弄され続けている。

自分が持っている時空間移動装置のお陰でなんとか自分ひとりぐらいは他の時空に移動することは可能だが、自らが率いている全員を移動させることは不可能である。

できることならば、このままここに・・・
そう思わぬでもないが、自分に全てを委ねている人々のことを考えると、それはできないことだ。

「ノア?」
ふと我に還ると、、フランソワーズが心配そうに自分を覗き込んでいる。

「どうしたの?」
「?」


「疲れたの?それとも気分が悪いの?」

「あ、いや、そんなことはない。ちょっと考え事をしていただけだ。」
「ならいいんだけど・・・」
安心したように微笑むフランソワーズ。

戦いの場に身をおくことの多い彼らには、心の休まる時は少ないかもしれない。
だが、それだからこそ、その短いひと時を存分に味わっている。
まるで数少ない宝物を、愛おしむように、慈しむように。

しかし、我が同胞達は、その短いひと時すら持てないのだ。
なんとしても、この手でそんな時を取り戻したい・・・。
その為に自分は存在するのだ。

ノアがそんな悲壮な決心を固めていると
「ところでさぁっ、」
誰かに思いっきり背中を叩かれた、いや、叩かれたというよりどつかれたの方が合っているかもしれない・・・。
「なんだよ、いきなり・・・」と思いつつノアが後ろを振り返るとジェットがニッっと笑っていた。

「お前さぁ、これからどうするんだよ。」

「もちろん、すぐに元の時空間に戻る。」
ノアはそう応えようと思って、思いとどまった。
視線の先にいる二人のことがどうにも気になって仕方がないのだ。

その二人たるや、こうして自分という人間が存在する以上、特別な関係にあるのはもはや疑いようのない、隠しようのない事実のはずなのに、この期に及んでまだ、「「僕たち(私達)は別に・・・」」などと言って言い抜けようとする、実に往生際の悪いカップルなのだ。
そして、今ここで見ていても、歯がゆいくらいに「普通の仲間」であろうとしているように見える。

戦いの間において、特別の感情を露にするということは、ある意味敵に弱点を曝しているようなものであるので、そんな態度が習い性のようになってしまっているのかもしれない。
もちろん二人の照れ性な性格もあるのかもしれないが・・・

そうは分析できても、ノアとしては気になってい方がないので、二人の関係の進展の度合いを確認することにしたのだ。
事と次第によっては、少々焚きつけてやっても良いかもしれない・・・そこまで思っていたかは定かではないが・・・(笑)

先ほど固めたばっかりの悲壮な決意は・・・「あちらの時間にはほとんど空白はないはず・・・」という考えできっちり封印して・・・
「どうせ、こちらに来たときの直後の時間に戻るのだ。疲れてしまったから、今晩一晩はここで休ませてもらって、明日の朝に戻ることにするよ。」

「うんうん、それが良いアルよ。人間疲れてしまっては良い考えも思い浮かばない。
まずはゆっくり休んで、それから美味しいものを食べて、気力と体力を取り戻すアルね。」

「よっしゃぁ、そうと決まれば、今夜は大宴会だぁ!」

「おいおい、ノアは疲れているって言ってただろう?ゆっくり休ませてやれよ・・・」
嗜めるように言うアルベルトの言葉はしっかりと無視してジェットは大宴会強行を決定してしまった





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                                      2009/09/30